30㎜の無垢床材
現在の住まいには当たり前のように新建材が多く使用されていますが、私たちは健康的で安心・安全な住まいをつくるために、人工物や設備に頼り過ぎず自然素材・天然無垢材を使用することをお勧めしています。

その一つが床材(フローリング)です。
透湿性や調湿性、長年の使用による住む人や建物への影響、使い勝手やメンテナンス性を考慮し基本的には30㎜の無垢床材をオススメしていますが、お客様の生活スタイルや優先事項をもとに適した床材をご提案しております。
床材は大きく分けて2種類に分類されます。
●無垢床材
天然木からなる床材で、二つに分類されます。
一つは丸太から切り出した自然な状態のままの無垢床材、いわゆる一枚もの、もう一つは複数の無垢材を接着剤で貼り合わせている集成の床材です。
どちらも分類としては「無垢床材」「無垢フローリング」になります。

集成の床材は複数の木を張り合わせているため、比較的品質が安定しています。 自然の無垢床材は、切り出したままの木材のため品質に若干バラつきがありますが、ひとつ一つの木材の表情が豊かなことが特徴です。
●複合フローリング
合板や集成材の基材の上に単板(0.2㎜~2㎜程度の薄木)や化粧シートを接着剤で貼り合わせた床材です。
大量生産できるため無垢材と比べてコストを抑えられる傾向にあり、標準的な床材として多く使われています。
傷や汚れに強い製品が多く使い勝手は良いですが、天然木の質感は無垢材には及びません。

それぞれのメリット・デメリットは?
●無垢床材のメリット
◎調湿効果、断熱効果で夏も冬も快適に過ごせる
自然素材である無垢材には調湿効果があります。
夏のジメジメとした時期には空気中の湿気を吸い、冬にはその湿気を吐き出すことで部屋の湿度を快適に調整してくれます。
◎無垢材ならではの肌触りと快適性
木材は多孔質であるため内部に多くの空気層を持っています。
自然の無垢床材はその空気層が生きているため、肌触りがとてもやさしく感じます。 複合フローリングで感じるような夏の時期のペタペタ感、寒い冬に踏んだ時のヒヤッと感はありません。 空気層が多いため、冬の時期に太陽光を取り入れると、床暖房のような輻射熱でやさしい温かさを感じます。

◎化学物質が少なく子供にも安心
自然の無垢床材は、何層も接着剤で貼り合わせている複合フローリングとは異なりシックハウス症候群やアレルギー発症の原因にもなる化学物質が少なく、人体にやさしい天然素材です。
特に30㎜の無垢床材は下地合板を使用せずに施工可能なため、より安心・安全に過ごすことができます。
床は壁や天井同様に室内空間における面積が広いこと、子供は床に座ったり寝転んだりして遊ぶことが多いこと等も考えると、床材の選択は重要となります。
◎リラックス効果がある
木の香りや肌触り、木目にはリラックス効果があることがわかっています。
「フィトンチッド」という香り成分は、人間の自律神経を安定させる効果があると言われています。 日々の生活の中で本物の木を感じることで、森林浴のようなリラックス効果が感じられるかもしれません。
◎経年変化を楽しめる
無垢材は時が経つとともに魅力が増していき、自然素材の木ならではの風合いが感じられます。
長年の使用により日に焼けて変色しますが、住む人と共に移り変わっていく色味や形状には 無垢材だからこその深い味わいが生まれ、愛着が増し、「経年変化」を楽しむことができます。
●無垢床材のデメリット
◎複合フローリングに比べて価格が高くなることがある
端材なども使え大量生産される複合フローリングに比べ、自然の無垢床材は一枚板を使用するため利用できる量が限定されることもあり、無垢床材そのものの価格が高くなることがあります。(グレードによっては複合フローリングの方が高くなることもあります)
また、複合フローリングと違い天然木を扱える大工も限られているため施工費用が割高になる傾向があります。

◎膨張や収縮により隙間ができることがある
無垢材の調湿機能は利点のひとつですが、水分を吸収したり排出したりする際に膨張や収縮が起こり隙間ができたり形状が若干変化することがあります。
自然の変化で木が生きている証拠なので、無垢材の特性として理解することが必要です。
◎傷がつきやすい
肌触りや快適性を考えると、杉などの柔らかい針葉樹がオススメですが、物を落とすとへこんだり、傷が付きやすいと感じることがあるかもしれません。
一方で、万が一へこんだり傷が付いたら、スチームアイロンを当てたりサンドペーパーをかけるなどして 自分で補修することができます。
傷や日焼けを味としてとらえたり経年変化として楽しむことができない方にとってはデメリットに感じるかもしれません。
●複合フローリングのメリット
◎色や価格帯、機能のバリエーションが豊富
複合フローリングは合板などの基材の表面に化粧材を貼り合わせた床材で「挽き板」「突き板」「シート」の3種類に分けられます。
色柄や価格帯が豊富で、用途やインテリアイメージに合わせて選ぶことができます。 また、表面塗装や硬化加工等により、傷やへこみが付きにくい、日常のお手入れがしやすい等 さまざまな機能が付加されている商品があります。
◎膨張や伸縮が少なく材が安定している
加工品のため温度・湿度変化に強く、ねじれや反り等が生じにくいものが多く、品質が比較的安定しています。また、床暖房に対応している商品が多くみられます。
◎大量生産、施工しやすいため価格が抑えられる
原木を使用する無垢材とは異なり、複合フローリングは加工品のため安定した生産量があります。 また、施工の仕方も異なり、一枚一枚張っていく無垢材に比べ複合フローリングは複数枚が1対となっているため施工効率が良く、コストを抑えられる傾向があります。
●複合フローリングのデメリット
◎商品によっては安っぽく見える
表面が平滑で均一な仕上がりなのは長所である反面、人工的で木の質感や本物感が感じられず、加工品の「ニセモノ感」で安っぽく見えてしまうことがあります。
木の質感を求めて挽き板や突き板にしたり、高機能な付加価値をつけるほど高価になるため 無垢床材より高価になってしまうこともあります。
◎調湿・透湿性がなく、湿気に弱い
基材が合板や集成材であったり、表面に塗装や防水加工がしてあると、当然調湿性や透湿性はありません。
そして、合板は湿気に弱いという弱点もあります。
強固な接着剤が使用されていても、結露など常に湿気があるところでは剥離が起こりやすく、合板がはがれてブヨブヨになってしまうことも珍しくありません。
また、肌触りが不快に感じることもあり夏の時期は不快なペタペタ感、冬は裸足では立っていられないほど冷たくなります。

◎経年変化を楽しめない、長期的な耐久性が劣る
複合フローリングは新しく貼った時が一番綺麗な状態で、その後は劣化していきます。 長年の使用で無垢材のように味わいを増していくことはなく、表面の化粧材や塗装がはがれてくること があります。
また、合板基材は無垢材に比べて床下での内部結露が起こりやすくなり、合板の接着剤が弱くなったり、内部結露は土台や柱を腐らせる一因にもなります。
表面的にも内部的にも長期的な耐久性は無垢床材に劣ります。
◎加工品のため化学物質が多くなってしまう
複合フローリングは基材の合板や仕上げまで何層も貼り合わせているため、接着剤の量が多くなります。
また、強度や耐久性を高めるための表面塗装や加工処理剤にも化学物質が含まれています。
◎傷がつくと自分で補修することが難しい
表面塗装等により浅い傷には強いですが、深く傷つけてしまうと基材の合板が見えてしまうことがあります。
自分で補修することは難しく、場合によっては床板ごと交換が必要なケースがあります。
それぞれメリット・デメリットがあり、皆さまはどのように感じられるでしょうか。
人生において長い時間を過ごす住まいは、安心・安全で健康的なものでなくてはなりません。 特に、床材は壁や天井とは異なり、住む人の体がいつも触れている部分です。
複合フローリングには多機能な製品がありますが、住む人や建物の健康を害する可能性があります。 数年で劣化する「工業製品」で、私たちの住まうべき空間には不自然に感じてしまいますが、 実際に住む人が何を重視するかによって選択することになると思います。